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短編

マーマ

短編マーマ       (1)   マレーネ・デートリッヒに針を落としたとき、その男は入ってきた。 「寒いね…」  年のころは二十台半ば、紺のブレザーに蔦の葉模様のエンブレム。白いボタンダウンにアスコットタイ。あたしの店には珍しいアイビー青年だ。 「 […]

桜ちゃんの神さま

桜ちゃんの神さま (1) 注文したラーメンが、やっと目の前に置かれたときだった。 「ただいま、入ったニュースによりますと…。本日未明、メソポタの指導者、ハンジー氏が、陰の 五人組に確保された模様です。もう一度、お伝えします…。本日未明、メソポタの指導 […]

ソウルスイッチマン

ソウルスイッチマン Ⅰ (1) 「二丁目のリリーさんに聞いた。それと、ネオンの文字に惹かれた…」 リリーさんの店は二丁目、僕の店は三丁目。 ネオンの文字は、ピンクとプルーの二本のネオン管を、ただ斜めに並べた。店の名などない。 「久しぶりの雪だ」 雪は […]

アンパンさん

アンパンさん (1) その一球だけ、私は冷静な判断が出来なかった。投手の渾身のスナップから弾き出された純白の球は、大気を切り裂き、真空の針の穴を一直線に駆けた。それは、闇の中に現れた一条の光だった。刹那に咲く希望の煌きだった。光は私だけに激しすぎる滾 […]

「精神猫」トラ

「精神猫」トラ 第一話 1 古代エジプトでは、猫を崇拝したという。 火事があれば、人々は真っ先に猫を救うことに努め、猫が死ねば、家人は眉毛をそり落とし、その死体をミイラとして手厚く葬った。人々は、どんな猫でも神のように敬い奉り、尊いものとして接してき […]

神樹

神 樹 -TREE OF HEAVEN-・・・ 河村 健一・・・ ・・・ 「あの種子を植えてくれたのは、あなたですね…」・・・ 男は、私の目を見ることもなくそう言った。伏せた目が、心なしか潤んでいるように見えた。咄嗟・・ には何のことか分からなかった […]